個展 画家 堀澤大吉 ~ノスタルジックな世界展2024~【個展終了】
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184.月光のサラスヴァティ
¥180,000
青い夜の中、大気は花の香りに満ち 風はゆるやかにその香りを運ぶ 遠く雲は流れ、月は膨らみ始めた。サラスヴァティの弾くヴィーナの音は銀の糸となり人々には知恵と閃きを 植物には花を咲かせ実を結ぶ 知恵と芸術、豊饒を司る女神、サラスヴァティ その美しく澄んだ瞳に幸福は映るのか?彼女は今もリグ・ヴェーダに記された”すぐれた川”に居るのだろう
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367.月の旅人/月光染め
¥180,000
満月の夜に染める月光染めといわれるものがある。 ツユクサ、ユキザサ、ヤマボウシ、マツヨイグサ、カスミソウ、タンポポ、トケイソウ、ジャスミン、この8種類の植物から抽出したエキスをさらに煮詰め、それを発酵させて溶液を作る。 そして、もう一つ重要なのが月の光だ。満月の夜、この小さな池に作った溶液を注ぎ入れ、30分程度よく攪拌する。溶液が池の水に馴染んだら月光を1時間程当てれば準備は終わる。 あとは草木染めと同じだ。 最後は綺麗な小川の水に晒し、自然の風で乾燥させれば出来上がり。 こうして染めた布は肌触りが良く丈夫で、仄かにジャスミンの香りがして、夏は涼しく快適だ。
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366.月の旅人/愛情生物
¥180,000
誰かの視線を感じ、何気無く横を見ると、草むらの中で一匹の猫が隠れるように姿勢を低くして僕を見ていた。 「おいで」と呼んでジッと僕を見てるだけで動かない。 僕はちょっと恐いので、この日はその場から立ち去った。 その日から僕が通るたびに猫はいる。 少しずつだけど猫は姿を見せるようになってきた。 ある日のことだった。いつものように立ち止まった僕に、猫はゆっくり近づいてきて見上げている。 僕はしゃがんで勇気を出して恐る恐る手をかざすと、何としたことか、猫は僕の手に頭をこすりつけてくるではないか。ゴロゴロと喉まで鳴らして…。 柔らかでしなやかな毛、あたたかな温もりが手に伝わってくる。 「可愛い〜」 この瞬間から僕たちは友だちになった。
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365.月の旅人/小さ神さま(三愛)
¥180,000
棚の上に祀ってある小さな祠の小さな階段に座って3人の小さな神さまは溜め息をついた。 3神は先ほどから小言ばかり言っている。 「近頃の者はわしらの方を見ようともせん。」 「一昔前の者はわしらを見つけると必ず手を合わせたもんじゃが…。」 「信仰心が無いからじゃ…。」 「刻が流れ過ぎたんじゃろ…。」 今は花器の榊は枯れ落ち、風に飛ばされ水も入っていない。 御神酒の入っていた徳利も神さまが飲み干してしまい、それ以降酒は満たされていない。平皿の塩も涸れている。 「塩を舐めつつ酒を飲みたいのう…。」 「ほんに酒が飲みたいのう…。」 「酒…。」 「ああ、嘆かわしい…。」 3人の神さまは下界を見下ろし、もう一度溜め息をついた。
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364.月の旅人/孤高の春
¥180,000
私が必要としているもの、私が自分で創造しなければならないものは、表現としては違うかもしれないが、これを一種の「哲学」だと思っている。 社交性というのは、私の中の好ましい孤独を遠ざけてしまう。「孤独」というものは私には必要なものだ。 人の流れの中で、ふと立ち止まり、振り返ると、目の前に大きな春がサンジュションのようにそびえ立つ。 過去の私は時の流れと共に薄れゆき、手をかざすと刻の遺伝子がこぼれてゆく。 過ぎ去ろうとする春の底で、私の回りの春の大気が揺れている。
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363.月の旅人/流星群
¥180,000
SOLD OUT
又、星が流れた。この丘に来てかれこれ1時間は過ぎたかな? その間に見えた流星は29個。まずまずの数だ。 流星群といってもこんなものだ。次から次へと星が流れたらもっと楽しいのに。 僕は思うのだが、物質には、どんな小さな小石や砂粒のようなものにも刻が存在する。でも流星の刻の始まりと終わりは残像だけ残しあまりにも短い。 流星はまるで揮発性のルミネセンスみたいな夜空の幻想元素だ。
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362.野月
¥180,000
月夜の野路を歩く。 月光を浴びた野で、見え隠れする老いゆく夏に儚い季節の移ろいを感じる。 夏の始まりと終わり、次の季節が始まる曖昧な境目で草虫たちの音が終わりを告る。 私は野に佇み、風と草虫の音を聞きながらこの風景の中で寂を思う。
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361.月の旅人/差し掛け小屋の週末
¥180,000
仲間と時間をかけてコツコツ建てた僕たちの隠れ家、秘密基地だ。ここを拠にして森の中で遊ぶ。今夜はこの差し掛け小屋が完成して初めての夜を仲間と過ごす。 安心できる家と違い、僕たちの小屋には何も無い。最小限の荷物だけ持って、必要なものは想像力と知恵を使って作り出す。これが又楽しい。 ワイワイやりながら、これから週末は気の合った仲間とここで工夫して不便を遊びに楽しい時間を過ごすのだ。 個人の持ってきてよいものルール 最小限の道具 鋸、ナイフ、マッチ、細ヒモ、コンパス、毛布、食料、鍋、食器一式、水筒 以上、これ以外のものを持って来る時は隊長が相談にのってくれる。
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360.月の旅人/微睡(まどろ)みのかけら
¥180,000
夜の森に、静かなくつろぎの時間が流れている。耳を澄ますと森のあちらこちらから色々な音が聞こえてくる。 燃える焚き火の炎が心地良い。 そのままうとうと浅い眠りの中で、なんとなく肌寒さで目を覚ますと、いつの間にか炎は消えて赤い熾になっている。 再び薪をくべ炎を甦らせ妄想に思いを馳せる。目の前の炎がゆらめき思い出したように焚き火が爆ぜる。 僕はこんなたおやかな森の時間がとても好きだ。
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359.月の旅人/樹上の月見
¥180,000
満月を挟んだ前後5日、僕はここに来る。家の近所にある巨木の太い枝の上だ。 この枝は僕のお気に入りで、柔らかな苔が生えている。 強い風が吹くと、時々少し揺れるけど、安定してとても座り心地がいい。 高い所だから、地上よりも早く月の出を見ることができる。 僕はここで月を見ながら、風に身を委ね、葉擦れの音を聞き、煙を燻らす。 幻世(まぼろよ)のような、行きたいのに辿り着けない。そんな場所に思いを馳せる。
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358.月の旅人/満月遊覧飛行船
¥240,000
SOLD OUT
広大な地平線の彼方に夕陽が沈もうとしている。 夕暮れの空は穏やかに晴れ渡り、風心地もなかなかいい。前方には巨大な飛行船が風でわずかに揺れながら浮かんでいる。今宵の風の宿だ。 日没後1時間で満月遊覧に出発。 空の上は寒いけど、船内で渡される浮遊胴衣は温かい。万が一船から落ちた時に空中で浮くためのものだ。うまく風を捕まえられれば自力で船に戻ることができる。 満月遊覧飛行は何度来ても心が踊る。 空の上からの今宵の月見が楽しみだ。
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357.月の旅人/月童子(つきわらし)
¥180,000
もう少しで丘の頂上に到着という時だった。 辺りが急速に明るくなったと思ったら、突然月が姿を現し夜空に昇り始めた。 月の上昇と共に月光は至る所で膨らみ、小さな月となって立ち現れた。それは月光の不思議粒子が創り出した一種の精神体なのか、それともあやかしなのか? お互いせめぎあい、丘の斜面を登る僕に向かって転がってくる。 僕は慌てて向きを変え斜面を走り出す。 小さな月童子たちはエーテル音楽を合唱しながら僕を追っかけてくる。と、この丘に来るたびに僕はこんなことをいつも妄想している。
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356.月の旅人/一抱えの秋
¥180,000
SOLD OUT
一陣の風の塊が通り過ぎた。回りの風草を巻き込みながら草の波を作り出す。 遠ざかる風は秋の陽炎のようだ。 風先はわからない。 私は残存する夏の残り香と、色付いた秋を腕一杯に抱えてほくそ笑む。 深まる秋の中で、私は野に在りてそうろう。
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355.月の旅人/散歩好きな月
¥180,000
この三日月が我家に棲み着いてどのくらい経ったのか?エサや水を欲しがるわけでもなく、昼のあいだは黒くなって動かない。ところが、夕方になって陽が沈み、辺りが暗くなると、ぽっと光り目覚め、やがて元気に光り出す。 散歩のサインだ。 リードを着けると三日月は嬉しそうに点滅を繰り返し歩き出す。途中で時々立ち止まり、からだを静かにゆすると宙に浮く。三日月自身の月照感覚なのだろう。 もしかしたら、これは私自身の月の形をとった記憶なのかもしれない。たぶんこれは奇妙な狂気だ。
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354.月の旅人/教訓
¥180,000
私は子どもを迎えに来ただけなのに、せがまれて肩車をしてやると、これが間違いだった。 周囲にいた子供たちが「ぼくも、わたしも」と集まってくる。 「ブランコ、ブランコ」といいながら両腕にぶら下がる、膝に登ってくる。 なんでこうなる。これでは柔らかなバーベルじゃないか! おまけに肩に乗った我が子はヒゲは引っぱるわ足で首を絞めるわで、子供たちは私のからだで大さわぎ。 この小さなリペラリストたちが~! この次の子どもの迎えは、もう少し素早く慎重に。 私にとって今日は辛くて良い教訓となった。
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353.月の旅人/月夜が始まる(月光蒐集家)
¥180,000
東の空が夜が月を連れてやって来た。 彼は森へ入る前に、ぼんやりいつも考える。 世界は神力に満ちている。月と星を見て、森に従った流底要素に対する感受性、ロマンティックな人生の幻想を楽しむ術を。 漠然と捉えどころのない感覚と精神の境目に生きる自分にとって幸福とは、単純に生きること、それに純粋に専念すればするほど、私は孤独を求めている。 月の高度が上がってきた。そして夜も膨らんできた。 彼は腰をおろしていた草むらからゆっくり立ち上り森へと向かう。今夜も月光の結晶を求めて…。
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352.月の旅人/森の陽炎(月光蒐集家)
¥180,000
青く烟る森の中を揺れる青い闇のような影が静かにゆっくりと動いている。 風が森を吹き抜けるたびに、木々の葉がさわさわと音を立ててそよぐ。それに合わせるように影も動く。 月光蒐集家"バック"だ。 枝の隙間から射し込む月光の木漏れ日の下を、木々の間に見え隠れしながら動いている。 月光溜りにある結晶を探しているのだろう。彼は音を立てず、森に溶け込むようにゆっくりと動くのでなかなか見つけることができない。まるで森が創り出した陽炎のようだ。
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351.月の旅人/眠り(月光蒐集家)
¥180,000
月光蒐集家、月影を歩く人、森の影に潜む人、と言われ、通称”バック”と呼ばれる。 推定身長3m全身黒ずくめで、黒いマントをいつも羽織っている。彼は植物性らしく森の植物とコミュニケーションをとりながら様々な情報を得ているらしい。 いわば森全体が仲間なのだ。 彼は植物が進化の過程で、何らかの条件で派生したと考えられる。 月夜の森を月光溜りにある月光の結晶を探し、森の中を彷徨い歩く。集めた結晶から栄養素を取り出し食料を作り出すためだ。 一晩中歩き回ったからだを休めるため、彼は森の中、居心地の良い場所を見つけ、夜明け前に眠りにつく。
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350.月の旅人/月光石(月光蒐集家)
¥180,000
西の方角にある朽ち果てた倒木の、樹齢200年の樫の根元に植生する草むらで僅かな香気を放つ、月光溜りを見つけた。柄の長い三日月型の器具が付いた柄の先端で草むらを突ついてみる。突く度に土の中で燐光と香気が強くなる。 月光石だ。広い森をあちらこちら歩き回り、この月光の結晶を集め栄養素を取り出しオレンジに光る食料を作り出す。これは月が出ている時に限るが…。 そして彼は青い森の中で秘めやかにほくそ笑む。
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349.月の旅人/月光蒐集家
¥180,000
SOLD OUT
僕のお父さんが小さい頃おじいちゃんから聞いた話だ。東に広がる広大な森の中に、月の光を集めている者がいて、おじいちゃんは小さい頃一度だけ、それに出合ったそうだ。全身黒ずくめで、やたら背の高くユラユラ揺れながら歩き,足音もさせない。前触れもなく出合ったそうだ。おじいちゃんは恐くて動けなかったけど、そいつは身につけていた袋からオレンジに光る玉を一つくれて、又揺れながらゆっくり森の奥へと消えて行ったんだと。この時の玉は今でも我家にある。おじいちゃんの話を聞いたお父さんとそいつを探して何度も森へ行ったけど、一度も出合ったことがないと言っていた。この話を聞いて、僕も明日森へ行ってみようかな…。
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348.月の旅人/星の実
¥180,000
僕の好きな木の実に、星の実と呼ばれるものがある。どんぐりほどの大きさで、クルミとピーナッツを合わせたような味がするとても美味しい木の実だ。 森のある場所にしかない。しかも夜でないと見つけることができない。昼間は他の木と区別がつかないのだ。星の木はさほど高い木ではないけど星の実は光って見える。落下した星の実もぼんやり光っている。まるで星空が地上に落ちたように見える。落ちた星の実より枝についたままの実の方が、だんぜん美味しいのだ。 今夜、昨年に比べ、大量に採れた。これで一年楽しめるぞ。
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327.月の旅人/妙音天の想い
¥180,000
大気が微かに流れているのか、いないのか、風の胞子が弾けて、風が生まれそうな曖昧な大気の中で、静かに目を閉じ、呼吸を整える。耳鳴りのような音の中に、微かな旋律が混ざる。夜が膨らみ、朧な燐光と香気に包まれ、現世と幻世が重なる。旋律は光となり、嫋々と世界を満たす。これは那由他の彼方、須弥山という山の頂で妙音天が奏でる琵琶の音なのか…
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326.月の旅人/風と重なる午後
¥180,000
僕と弟は四つ違いだ。僕は弟が可愛くてしかたない。どこに行くにも一緒だ。今日は近くにある丘にやってきた。弟はゴキゲンみたいで、途中で拾った風草の枯木を振り回しながら、何やら歌っている。弟の足に合わせ、ゆっくり歩く。つないだ弟の手があたたかい。ゆるやかな坂道をのぼり、火照ったからだに丘に吹く風が心地良く、吹き抜けてゆく。そんな僕たちを父さんはニコニコしながら見ている。
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325.月の旅人/月とアンモナイトの記憶
¥180,000
夜更けなのだろう。何となく薄明るいのは、たぶん月明かりのせいだ。波の音がするのは、砂浜を歩いている。それも、沙漠のように広大な砂浜だ。波打ち際に、夜の生き物のように横たわる、夜光虫で光る、巨大なアンモナイトの化石があった。誰かの安らかな温もりの腕に包まれて、私の幼い頃の夢見がちな記憶を紐帯する、過去の記憶と未来の夢。それはサジェスチュン(暗示)のように私の中で旅をする。