個展 画家 堀澤大吉 ~ノスタルジックな世界展2024~【個展終了】
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160.月の旅人/月の投影機(moon catcher)
¥120,000
この機械が、いつ頃からこの野原にあったかはよく分かっていない。月の幻燈機と同じくらい古い事だけは分かっている。2種の機械はこの野原に点在して置かれてあり、野の草に埋もれ、それでもなお、今でも動き続けている。幻燈機が、新月の夜しか作動しないのに対し、投影機の方は天候に左右されることもなくその時の月の状態を毎日映し出してくれる。幻燈機にしても、投影機にしても、これらが何のために作られ、ここに置かれたのかは謎のままだ。唯、2種の機械の置かれている夜の野原の風景は、見る人の心をやすらかにしてくれるのは確かである。
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159.月の旅人/微睡みに見る夢
¥180,000
どうしようもなく眠くなる。その誘惑に負けて瞼を閉じる心地良さ。意識の半分は覚醒したまま、後の半分は甘美なレムの世界へと引き込まれてゆく。長さの無い時が支配する。形があって無い者達の棲む世界。その隙間をねらって、夢のかけら達が入り込む。時に、リアルな音や香り、色を撒き散らせ、意識の中を自由に飛び回る。夢のかけらと現実が少しずつ、ずれて重なり合い、そして目が覚める。ずれて重なり合う事ができなかったかけらが、意識の浅瀬で、波の残した泡のようにはじけながら消えてゆく。微睡みの残り香と共に…。
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157.月の旅人/突風の風景(風に3)
¥240,000
気まぐれな夜の大気がふくらんだ。厚い空気の壁が突然ぶつかってくる。突風だ。この風は僕達を小さな混乱に巻き込む。うつぶせになるもの。ひっくり返るもの。風にその身をまかすもの。しがみつくもの。最後におしゃべりな友だちを黙らせると、木々や草をゆさぶりながら吹き抜けてゆく。今夜は何だかワクワクだ。又来い!僕達にとっては風に3だ…。
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154.月の旅人/月の水族館
¥240,000
薄っすらと月明かりの差し込む巨大な水槽の奥からヒレを不器用に動かし、そいつはゆっくりと僕達の前に現れた。“ラテメリアだ”水の屈折率のせいで、大きく見えるんだろうけど、僕達はその大きさにびっくりしてしまった。薄明かりの中で不気味に光り、キロキロ動くそいつの目と視線が合い、どうしていいか分からずおろおろしている僕達をしりめに、ラテメリアは何事もなかったように、再び薄暗い水槽の奥へ幻みたいに消えていった。月の水族館、次は何が出てくるのかな?
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136.月の旅人/moolight fishing
¥240,000
私と子供達はこの日が来るのをずいぶん待っていた気がする。今夜はめずらしく暖かい。年を追うごとにいつの間にか大人になっていく子供達。そんな子供達にせがまれての月夜の魚釣りだ。私達は魚を釣ることではなく、共に過ごせるこの時を楽しむ。いつか思い起こすであろう、夢の記憶のように。月の光が水面にたくさんのきらめきを落とし、ゆらゆら揺れる。私と子供達の影もゆらゆら揺れる…。
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131.月の旅人/真実は僕らのそばに
¥300,000
ちゃんと道を歩いていたはずなのに、僕達はなぜこんな草むらにいるんだろう。ごきげんで前を歩くショウタについてきたらこんなことになってしまった。おまけに、僕が先頭になっている。ショウタはちゃっかり後ろで僕のザックにしっかり掴まってキョロキョロしている。一番後ろのカツマロ君もショウタのザックを握ってこわそうだ。僕だってこわいんだぞ。ショウタが後ろで何か言っている。言い訳すんな…。月が昇り、しばらくして気がついた。間違えたと思っていた道のそばの草むらを、僕達は怯えながら歩いていたのだ。
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130.月の旅人/記憶を秘めた石の谷
¥240,000
5個目の石でそれは出た。光る化石、ブルーリトケラスだ。化石が入ったノジュールという石、100個に1個の確率で見つかる。それを僕は5個目で見つけてしまった。空気に触れるとアンモナイトが光り出す。しばらくすると、半透明のキレイな鉱物へと変わってしまう。友達みんなが探している憧れの石だ。緊張しながらハンマーを振り下ろす。カツマロ君とショウタが見つめる中、何度目かの打撃で石が割れた。そして、沈黙…。月明かりで満たされた谷間に、僕達の歓声が響いた。
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129.月の旅人/彼のシェマ彼女のシェマ
¥240,000
みんなで始めたかくれんぼ、鬼になった気になるアイツ。私のそばの木の陰に隠れている友達、鬼のアイツには見えているのに知らん顔。何故か、アイツに最初に見つけてほしい、そんな気分。わざと動いてみたりする。でも、アイツがそばに来たときは心と裏腹に、息をひそめて身じろぎひとつできない。そんなことの繰り返し。満月が私を見て笑ってる。そんなにおかしい?私の事…。“それが人を好きになることの始まり、初恋ってやつですよ”
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128.月の旅人/trouble maker’s
¥180,000
今日は満月。リムちゃんは落ち着きがなく、妙に興奮して僕の周りを動きまわり、おまけにノッチ君が弟を連れて来た時から何か嫌な予感はしてたんだよな。僕がちょっと机を離れた隙に、事件は起こった。すぐ引き返したけど、遅かった。机の上に置いたノートには、意味のない描いた者が誰かすぐ分かる線で埋め尽くされていた。「もっとうまく描けよ~!」そう怒鳴りながら、逃げ去る彼等を見た僕は思わず吹き出してしまった。一生懸命逃げてるつもりだろうけど…恐ろしく逃げ足が遅い!変な奇声を発して、逃げるその後ろ姿。もう怒る気もしない。僕の愛すべきトラブルメーカー達は、月明かりの中でとても楽しそうに見えた。